名古屋大学 戸田先生をお招きして特別講義を開講しました(2019/1/21)

投稿者: | 2019-01-23

修士課程環境社会基盤工学専攻の学生向けの特別講義の枠を利用して、
名古屋大学工学部の戸田祐嗣先生をお招きして特別講義を開いていただきました。

『河川環境の数値解析モデル開発~河川生態系・河道内植生を題材にして~』と題して、
戸田先生がライフワークとされている流域における物質動態、それが支える河川生態系や
河道内植生の動態について、幅広いレビューに基づいて仮説を検証するための数値解析モデルを主な手段として進めてこられたご研究について、ご講演いただきました。

その研究成果が興味深いのはもちろんですが、河川生態系を支える物質動態について、河川生態学分野で古くから唱えられてきた「河川連続体仮説」、「洪水パルス仮説」などに、工学者としてどう切り込んできたか、諸説ある河道内樹林化現象の要因についてどのように各要因をとらえるべきか、といったアプローチに込められた研究哲学は、大変勉強になりました。

戸田先生、ありがとうございました。(原田)

概要:

流域に降った雨は、川を流れ下り、合流を繰り返しながら流下する中で様々な河川景観を通過し、各々の景観で異なる物質循環プロセスを経ながら、河口へと流れていく。例えば、河川に生息する底生動物は、摂食活動を通じて有機物のダウンサイジングや無機態の代謝等を行うことに加えて、上流から下流へと輸送される有機物や栄養塩を生物体として河川内にストックする役割を担っている。これらの特徴は,流下方向の物質・エネルギーのつながりを記述した「河川連続体仮説」において、流程に沿った有機物の生産消費、底生動物やその餌資源の流程分布という形で示されている。一方、河川連続体仮説に対して、洪水等による主流路と氾濫原の間での物質交換が重要であるとする「洪水パルス仮説」がある。これらの仮説は河川の中での物質・エネルギーの流れと生態系の特徴を説明する概念として広く知られている。本講義では、河川の生態系の基盤となる物質循環を数値解析モデルにより表現することにより、「河川連続体仮説」と「洪水パルス仮説」について論じるとともに、河道内の植生が河川生態系に果たす役割やその動態についての研究成果を紹介する。