現在進行中のプロジェクトについて


1)環境省環境研究総合推進費 2022年度〜2024年度

林地へのバイオ炭施用によるCO2放出の削減と生態系サービスの強化に関する研究
研究代表者・吉竹晋平(早稲田大学)

林地で発生する様々な有機物残渣を原料としたバイオ炭を作出し、自然分解と比較した際のCO2放出の削減効果を算出する。また、バイオ炭を施用したときの生態系の短期的応答について、バイオ炭の種類や土壌の違いが与える影響を評価する。さらに、実際の林地へのバイオ炭の施用が、生態系の各構成要素および生態系サービス(炭素隔離機能やレジリエンス機能)に及ぼす中長期的影響を定量的に評価する。

サブテーマ2リーダー
バイオ炭施用による中長期的な生態系の応答性と炭素隔離機能の定量的評価

2015年にバイオ炭施用を行った落葉広葉樹二次林では、短期的にはリター分解と樹木種子生産の両方の増加が認められた。これらは炭素隔離機能(Net ecosystem production; NEP)に対して正反対の効果をもたらす。しかし、細根生産を含めたNEPの定量的評価と、中長期的な応答性についてはまだ解答が得られていない。本サブテーマでは、バイオ炭施用が土壌中の栄養塩動態に与える変化を通して、森林生態系のNEPに与える中長期的な効果を野外で定量的に評価する。


2)科学研究費補助金 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B)) 2021年度〜2025年度

荒廃地へのマングローブの植林は生態系炭素貯留量をどのくらい増大させるか

地球上で最もCarbon-richな生態系であるマングローブ林は、同時に最も脆弱な生態系でもあり、その保全は地球温暖化緩和のための重要な戦 略である。タイ王国では、エビ養殖のために多くのマングローブ林が破壊されてきたが、近年になって、生産性の低下に伴って古い養殖池の放 棄が見られるようになり、マングローブの植林が進められている。このような荒廃地での生態系炭素貯留量(Ecosystem carbon storage: ECS) の回復は、その保全と同等の温暖化緩和のための低コストオプションになり得るが、まだ研究例は少ない。本研究の目的は、タイ王国でのマン グローブ植林が、ECS(特に土壌有機炭素)の蓄積に与える効果を評価して、蓄積した有機物の起源を明らかにする事である。また、日本とタ イの若手研究者の交流を通して、マングローブ林の土壌有機炭素動態についての国際的な研究の活性化を目指す。


3)科学研究費補助金 基盤研究(B) 2020年度〜2022年度

北極モスツンドラ湿原の凍土融解・流出過程における有機炭素の分子種別変動機構の解明
研究代表者・藤嶽暢英(神戸大学)

北極圏のモス-ツンドラ湿原は、湿地かつ泥炭地かつ永久凍土の性質を併せ持つ高密度炭素(C)生態系である。近年の温暖化による気温上昇は、夏期の凍土融解・湿地水流出時の定量的C損失を促進し、より大きな質的C変動をももたらす。そこで本研究では、流出過程で光・微生物分解を受けて性状の異なる成分へと変遷する様子を分子種別に明らかにする。現場とインキュベーション実験の試料分析を通じて、凍土融解や湿地水の有機炭素流出が気候変動や生態系変動にもたらす影響を予測するための科学的根拠を立脚する。


4)科学研究費補助金 基盤研究(B) 2019年度〜2022年度

バイオチャーが森林生態系の土壌圏と生態系炭素隔離機能に及ぼす中長期的影響の解明
研究代表者・吉竹晋平(早稲田大学)

森林生態系へのバイオチャー散布が生態系の炭素隔離機能に及ぼす影響を明らかにするため、実際の森林においてバイオチャー散布実験を実施し、生態系の各要素の応答を明らかにしたうえで生態系純生産量の変化を定量的に評価する。また、追加の野外散布実験や室内実験により、これまで未解明な部分が多かった土壌圏における炭素・養分動態を明らかにし、バイオチャー散布がどのようなメカニズムによって生態系に影響を及ぼすのかを明らかにする。




過去のプロジェクトについて


1)科学研究費補助金 基盤研究(B)(海外学術調査) 2015年度〜2017年度

タイ王国トラート川河口マングローブ林における土壌生態学的研究

マングローブ林は、地球上の陸上生態系の中で最も巨大な炭素の貯蔵庫であるが、その炭素蓄積メカニズムは必ずしも明確ではない。その最大の原因は、潮汐と河川の流れによって上流の森林生態系や海洋生態系と水を介して繋がっており、炭素の動きが一般的な森林とは全く異なるためである。研究代表者は挑戦的萌芽研究(H25-H27)の助成を受け、石垣島吹通川河口のマングローブ林を対象として、生態系生態学と土壌有機化学の連携によって、その土壌炭素プールの定量的評価と蓄積メカニズムの解明する「土壌生態学」的手法を創出した。本研究の目的は、熱帯マングローブ林にこの手法を適用し、巨大な炭素プールに対する流域全体の寄与 (山−川−海の連環) を明らかにすることである。


2)科学研究費補助金 挑戦的萌芽研究 2015年度〜2016年度

マングローブ林のミッシング炭素−分解呼吸によるCO2は何処に行く?-

マングローブ林における微生物分解呼吸は、通常の森林と同様に土壌表面からのCO2代謝(土壌呼吸)として測定され、還元的条件下で非常に小さいと考えられてきた。しかし近年の研究で、硫酸還元菌などにより深い土壌でもCO2生成が起こること、また動物活動の結果できる穴だらけの土壌が潮の干満によって溶液の出入りが繰り返されるスポンジのように働く(subsurface pump theory) ことが示唆された(図1)(1)。これは、マングローブ林内での分解呼吸のほとんどが定量されずに溶存無機炭素(DIC)として失われている(ミッシングC)ことを意味する。本研究の目的は、このミッシングCの探索のために分解呼吸の定量的な評価手法を開発することである。


3)住友財団環境研究助成 2014年度〜2015年度

マングローブ土壌には、なぜ多くの炭素が溜まるのか? ー山・川・海の連環の解明ー

土壌圏を中心とする陸上生態系の非生物的炭素プールの動態を解明するためには、物質循環の生物プロセスを調査する生態系生態学と、枯死物の有機化学的変化と土壌生成プロセスを調査する土壌化学の連携が必須である。特にマングローブ林は、自らのリターだけでなく、上流部の森林や水中の藻類・海草類に由来する有機物が集積すること、また河口の特殊な環境下(塩類や潮汐)での土壌化学的・微生物学プロセスの存在など、マングローブ林での土壌炭素蓄積プロセスは通常の森林土壌に比べて複雑である。本研究では、「マングローブ林の土壌炭素がなぜ多いか?」、「森・川・海の生態系が土壌炭素蓄積にどのように寄与しているか」について明らかにする。


4)科学研究費補助金 基盤研究(B) 2014年度〜2016年度

北極永久凍土融解による土壌炭素分解の実態解明とそのダイナミクスに関する調査研究
研究代表者・近藤美由紀(国立環境研究所)

温暖化によって北極の永久凍土域の炭素動態はどのように変化するのだろうか


5)文部科学省概算要求 特別経費「大学の特性を生かした多様な学術研究機能の充実」

中部山岳地域の環境変動の解明から環境資源再生をめざす大学間連携事業

-地球環境再生プログラム- 平成22年4月~平成27年3月

日本の屋根である中部山岳地域は、地球規模で起こっている温暖化に対して最も脆弱な地域であり、「炭坑のカナリア」とでも言うべき存在である。我々は、気温や降水量、降雪量などの気候変化だけでなく、動植物の分布や生態系の炭素循環・水循環の変化など、温暖化が中部山岳の自然におよぼす様々な影響を見逃さないようにする必要がある。同時に、中部山岳地域が多くの都市の水源であるように、この地域の持つ環境資源への影響は、流域の人間生活にも大きな影響を与える。中部山岳地域に研究フィールドを持つ、岐阜大学・信州大学・筑波大学の三大学の研究センターが連携し、中部山岳の自然と、地域の人間生活に、環境変動がどのような影響を与えるのかを監視する。
http://jalps.suiri.tsukuba.ac.jp/


6)科学技術戦略推進費 戦略的環境リーダー育成拠点形成事業

「岐阜大学流域水環境リーダー育成プログラム」

アジア諸国は水質・水資源・農業灌漑用水・生態などの水環境に関わる様々な問題に直面しています。岐阜大学流域水環境リーダー育成プログラムは、これらの問題を多角的な視野で的確に理解し、戦略的な解決策と発生防止策を設計・施行する環境リーダー(国内リーダーと国外リーダー)の育成を目指します。
http://www.green.gifu-u.ac.jp/BWEL/

このページのトップへ