日本生態学会第64回東京大会でおこなわれる自由集会のご案内

 津田研究室ではだいぶ前から草原の火入れ(野焼き,ヨシ焼き,山焼きなど)の研究をおこなっています.草原火入れの研究を進めてきて気づくのは,かつての草原景観を取り戻すために自然再生を目指す地域が近年かなり増えてきたことです.生態学者が草原再生へ貢献できるケースがたくさん出てきたように思うので,草原再生を目指して管理作業を実践している団体(研究者に限らない)に集まっていただき,現状や課題などについての情報交換の場を作ろうということで自由集会を企画しました.

◆以下は生態学会に登録してある要旨です

自由集会W08「草原再生における現状と課題:研究者と市民の視点から」

 ススキ群落などの半自然草原は全国的に減少しているが,とくに東日本では管理放棄による草原の減少が著しい.草原を良好な状態で維持していくことは,そこを生息地とする絶滅危惧種の保護や,生物多様性の確保などの観点からも重要な課題になっている.このような状況から,荒廃した草原の再生をはかり,保全していこうとする地域も多い.草原を再生する試みは行政や研究者が参加して大規模におこなわれる場合もあるが,市民レベルで小規模な管理作業が実施される場合も少なくない.そこで本集会は,東日本で草原の再生・維持管理などを市民レベルで実践している団体に集まっていただき,それぞれが抱える問題点や課題のほか,うまく進んでいる状況などについても情報提供していただくことにした.たとえば,「研究者の参加がなく,科学的な裏付けがないままに事業を進めている」とか,「行政が関わらないので大規模なことができない」,「高齢化が進み,必要な人手が集められない」など,地域ごとに抱える問題はさまざまである.また,生態系や種の保全・保護,文化や景観の継続,茅(屋根材)の確保など,地域ごとに目的も異なっているし,再生・管理の方法も,刈り払い,火入れ,放牧など多様である.地域ごとの個別の課題でも,参加者全員が共有し同時に議論することで,失敗の繰り返しを回避したり,計画を実現できなかったりする状況を少なくすることができるだろうし,それぞれの地域が目指している草原再生に役立つと期待される.
 この自由集会では,それぞれの地域で活動実践している団体や研究者にお集まりいただき,草原再生の現状や課題について紹介していただく予定である.

[W08-1] 安比高原(岩手県八幡平市)の事例 渋谷晃太郎(岩手県立大)
[W08-2] 寒風山(秋田県男鹿市)の事例 津田智(岐阜大学)
[W08-3] 土呂部(栃木県日光市)の事例 飯村孝文(日光茅ボッチの会)
[W08-4] 上ノ原(群馬県みなかみ町)の事例 北山郁人(森林塾青水)
[W08-5] 菅生沼(茨城県常総市)の事例 小幡和男(茨城県自然博物館)
[W08-6] 大麻生公園(埼玉県熊谷市)の事例 高橋衛(埼玉県生態系保護協会)・米林仲(立正大学)
[W08-7] 下総の牧(千葉県白井市と近隣地域)の事例 高橋栞(東邦大学)
[W08-8] 牧の入茅場(長野県小谷村)の事例 井田秀行(信州大学)
[W08-9] 三ツ石(長野県軽井沢町)の事例 今城治子(軽井沢サクラソウ会議)


自由集会W08 「草原再生における現状と課題:研究者と市民の視点から」
    日時: 2017年3月14日(火) 18:00-20:00
    会場: 早稲田大学3号館601号室 <I会場>
 企画者: 津田智(岐阜大学流域圏科学研究センター)・増井太樹(岐阜大学流域圏科学研究センター)


※ 参加希望の人は,
   生態学会員でも非学会員でも,自由集会(本集会以外にもたくさんあります)だけの参加なら参加費は無料です
   自由集会以外に,企画集会やポスターセッションなど他のプログラムも見聞きしたい場合は参加費(一般:12000円,学生:5000円)が必要になります
   詳しくは生態学会 東京大会のホームページでご確認ください.

※ ご自身が関わっている草原再生について,情報提供しても良いと考えている人は,
   上記演者(9地域の関係者)のみなさんには,それぞれの関わっている草原について,前もってアンケートにお答えいただいております.
   そのアンケートと同じものをこちらから入手(→ ダウンロード)し,記入後2月末日くらいまでにメールで津田まで送ってください.集会での討論でするときに簡単にご紹介したいと思います.