寒風山シンポジウム「寒風山で学ぶ環境問題」を終えて



 2008年11月23日に男鹿温泉で寒風山シンポジウム「寒風山で学ぶ環境問題」という集会を開催しました.岐阜大学津田研究室の寒風山での研究成果を地元に少しでも還元しようと計画したもので,地元の人を中心に34人の参加者がありました.
 なお,講演内容を下に掲示しますが,実際の発表の時のスライドでは未公表データなんかも使っていたため,それらの一部には掲載を控えさせていただいたものもあります.


寒風山シンポジウム「寒風山で学ぶ環境問題」(男鹿温泉交流会館「五風」, 2008.11.23)

講演1 「寒風山の歴史 −草原って何だろう−」澤田佳宏(兵庫県立大学淡路景観園芸学校)

講演2 「火入れ草原の環境 −山焼きって何だろう−」津田智(岐阜大学流域圏科学研究センター)

講演3 「地球温暖化と炭素循環 −草原と森林の土壌環境−」安立美奈子(農業環境技術研究所)

講演4 「火を入れたときに土から出てくる二酸化炭素」八代裕一郎(岐阜大学流域圏科学研究センター)・安立美奈子(農業環境技術研究所)

講演5 「生物多様性から見た山焼きと草刈り」澤田佳宏(兵庫県立大学淡路景観園芸学校)

講演6 「寒風山の招かざる客」津田智(岐阜大学流域圏科学研究センター)



◆ このシンポジウムを終えた寒風山生態系研究会メンバー(シンポジウムの演者)の感想を書いておきます.

<澤田>
 今回のシンポを経験したことによって,寒風山の草原管理の歴史・来歴をきちんと整理する必要性をこれまでよりも100倍くらい強く感じるようになりました.山焼きに反対の人も含めた地域の合意のためにも,寒風山の植生やフロラを理解するためにも.
 シンポの質疑応答のときのNさん(一般参加者)のご発言を聞くと,「全山が芝山」という表現でした.また,観光案内はじめ,多くの文書に「全山芝山」という表現がでてきます.しかし,一方では,冬季の飼料を採草しているわけで,芝山での採草はあり得ないと思います.実際,シンポ後にNさんに質問をしたら,ススキも生えていた,とおっしゃっていました.このことから,寒風山の植生は全山が均質なシバ草原ではなく,そもそも空間的に不均質な草原だったことが想像されます.
 したがって,寒風山の草原の来歴を把握するには,時間的な変遷を時系列で追いかける,というだけでは不十分で,寒風山のどの部分がどのように変化してきたか,という時空間的な変遷を把握しないといけなさそうです.地域のお年寄りに聞き取りをするにあたっては,寒風山の模型などを持参する必要があるでしょう.(読図が苦手な方への聞き取りでは,立体的な地図が有効と思われるため)

<安立>
 研究を地元に還元するというのは結構難しいのだなぁと思いました.「私は知りたかった」けど,みなさんはどうなのでしょうか?

<津田>
 なんとか無事にやり終えた感じです.山焼きに対するポジティブな反響もありませんでしたが,強い批判も出ませんでした.今回のシンポジウムは「とりあえず男鹿で話す」ということを最優先に考えておりましたが,今後は研究データをさらに蓄積して,きちんとした成果が発表できるように努力して行かなくてはならないと思っております.シンポジウムの開催によって「これで終わり」ということではありませんので,今後も寒風山の仕事は継続していくことになると思います.


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