小清水原生花園における植生の保全に関する研究 VI 埋土種子集団の組成と構造

日本生態学会第45回大会(京都, 1998)

安島美穂 (岐阜大学流域環境研究センター)
津田 智 (岐阜大学流域環境研究センター)
冨士田裕子(北海道大学農学部附属植物園)

 北海道東部の小清水原生花園では,海岸草原植生の維持管理のために毎年火入れを行っている.火入れ後にはヒロハクサフジ,ネナシカズラなどの種子発芽個体が増加し,攪乱により植生が変化する可能性が示唆された.そこで,さまざまな攪乱後の植生変化を推測するために,深さ10cmまでの埋土種子集団の組成と構造を調べた.
 採取した土壌サンプルのからは,全部で31種の種子が検出された.埋土種子の垂直分布は種ごとに異なっており,おもに2つの傾向がみられた.ナガハグサ,ヒロハクサフジ,ネナシカズラなどの種子は地表面付近に多く,深いところには少なかった.このような分布をする種の多くは現存植生中に普通にみられるものだった.シロツメクサ,キジムシロなどは6cm以深の深いところで種子粒数が多かった.これらの種は現存植生中にはほとんどみられないので,古い時代の植生を反映している可能性がある.土壌の攪拌を与えた際には,深いところに多数の種子が蓄積されている種が増加する可能性がある.


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