研究

And you may tell yourself. MY GOD !...WHAT HAVE I DONE?
(from "Once in a Lifetime" by Talking Heads)
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おおきな目的

 破滅的な人為攪乱によって植生が一度破壊された海浜において,どのような海浜植生がどのようにして成立するのかを解明すること.


研究テーマ 1: 海浜における防波堤工事後の植生成立過程


 海浜における防波堤の築造工事では,地表面下に防波堤の基礎を建造する.このため,海浜の砂を掘り取り,工事期間中は周辺に積み上げて保管し,工事後に再び埋め戻す作業が行なわれる.この一連の作業は,自然状態の海浜植生が経験しない大きな撹乱であり,植生に対し壊滅的な影響が及ぼされる.しかし,工事から数年を経た海浜では,海浜植生が成立していることがしばしば見受けられる.
 そこで,工事によって一度植生が失われた海浜を放置した場合,どのような植生が,どのようにして成立するのか,を明らかにするため,徳島県鳴門市の1994年から2000年に防波堤工事が行なわれた海浜で,植生および芽生えの分布・定着に関する調査をおこなった.工事後の経過年数が異なる6地点における3年間の調査によって,工事後1年目から9年目までを観察することができる.植生および地形のベルトトランセクト調査からは,工事後に成立する植生の種組成や構造,微地形との対応を把握する.また,芽生えの分布と定着に関する調査からは,シードバンクとシードレインのどちらが植生回復の原動力となるのか,また群落の成立と維持に種子がどの程度貢献しているのかを考察する.


研究テーマ 2: 海浜植物の種子発芽休眠特性および海流散布適性


 海浜植物のように,生育地の孤立化が進み,残された生育地では強い撹乱を受けるという種群では,その保全計画を立案するにあたって,種子の発芽・休眠特性および種子散布特性について把握することが重要である.
 そこで,日本の暖温帯の代表的な在来海浜植物11種(コウボウムギ,コウボウシバ,ハマヒルガオ,ハマエンドウ,ケカモノハシ,ハマゴウ,オニシバ,ビロードテンツキ,ハマニガナ,ネコノシタ)と,海浜に優占群落を形成する外来種3種(ボウムギ,コマツヨイグサ,オオフタバムグラ)を対象とし,(1)制御環境下での種子発芽特性,(2)海水浮遊能力,(3)海水浸漬後の発芽能力に関する室内実験,(4)野外条件下での種子発芽試験,(5)埋土後の発芽能力試験を行なった.これらの実験で得られる結果から,種子の海流散布の可能性や,永続的シードバンク形成の可能性について明らかにする.また,この結果に基づき,強い人為撹乱を与えられた後に,これらの種がどのように振舞うかを考察する.


学会発表

  • SAWADA, Y. and TSUDA, S. (2005) "Vegetation establishment following a disturbance of breakwater construction on coastal dunes in Japan." IX International Congress of Ecology (MONTREAL)
  • 澤田佳宏(2004)「海浜に生育する植物14種の永続的シードバンク形成の可能性」第51回日本生態学会大会(釧路)
  • 澤田佳宏・津田 智(2003)「徳島県鳴門市の海浜における防波堤工事後の植生回復」植生学会第8回大会(熊谷)
  • 澤田佳宏・津田 智(2003)「海浜に生育する植物14種の種子発芽休眠特性および海流散布適性」第50回日本生態学会大会(つくば)
  • 澤田佳宏・武田義明(2001)「遠州海岸における海浜植生と海浜幅の関係」植生学会第6回大会(盛岡)

  • 論文

  • 澤田佳宏・津田 智(2005) 日本の暖温帯に生育する海浜植物14種の海流散布の可能性. 植生学会誌, 22:53-61.
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  • 論文(筆頭著者でないもの)

  • 津田 智・澤田佳宏・安立美奈子・津田美子(2005) 岩手県久慈市における1983年の山火事による落葉広葉樹林焼失地の植生(短報).植生学会誌, 22:63-68.
  • 津田 智・後藤 晋・高橋康夫・笠原久臣・澤田佳宏・安島美穂(2002) 北海道中央部の針広混交林における山火事から87年が経過した森林群落の植生(短報).植生学会誌, 19:125-130.
  • 服部 保・澤田佳宏・小館誓治・浅見佳世・石田弘明(1996) 都市林の生態学的研究 I. 宝塚市ニュータウン内のオオバヤシャブシ−セイヨウイボタ群落.人と自然, 7:73-87.

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