教育実施計画 : 計画概要

[概要]
衛星生態学はこれまでの生態学や気象学とリモートセンシング研究の抱き合わせではなく、総合生態学とも言うべき性格をもつため、それに則した教育・研究体制の構築が必要となります。新たな学問分野である衛星生態学の確立を目指す本プログラムへ大学院生及び博士研究員が積極的に参加することにより、科学的・学際的能力を持つ自立した若手研究者が育成されます。また、本プログラムを実践して行く過程で、海外の共同研究者や環境行政担当者、企業の環境マネジメント担当者等と連携することにより、社会の問題を解決する能力を持つ若手研究者が育成されます。

[生態プロセス研究・リモートセンシング研究・気象モデリング研究の基礎教育]
RAおよびPDは、これまでの学習・研究歴に基づき、本プログラム全体についてのガイダンスを受けた後、生態プロセス、リモートセンシング、水文気象学の基礎教育を受けます。基礎教育は、講義・実験・実習を組み合わせ、事業推進担当者が協働してあたります。参加する全てのRAとPDがプロセスとリモートセンシングの両手法を身につけ、これにより学際的な発想力を養うことができます。さらに、衛星生態学の基本的な手法を取得し、新たな学問分野を形成するための若手研究者を養成します。これらの教育課程では、e-Learningシステム(文部科学省「現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)」平成16年度採択)を取り入れ、岐阜大学学生はもちろんのこと、遠方の他大学に所属する学生、研究者を対象とした教育体制を整備します。e- Learningシステムとはインターネットを介した大学間単位互換科目運営制度であり、岐阜県では県行政が推進する「岐阜情報スーパーハイウェイ」の利用が可能です。本システムの利用により、遠隔地の大学での衛星生態学の基礎教育および研究現場の情報提供が可能となります。

[新たな学問「衛星生態学」の確立]
事業推進担当者および本拠点に関わる若手研究者(RA・PD)が生態プロセス研究・リモートセンシング研究・気象モデリングを統合して衛星生態学の基礎をなします。衛星生態学の使命はヒトと自然の関係のあり方に対して提言を行うことであるため、環境行政担当者、企業の環境マネジメント担当者、市民といった多様な主体が、フィールド・ワークとラボ・ワークを通して実践的研究を一体となって推進することにより、社会と密着した研究成果の輩出や学問分野としての確立が達成されます。新たな学問分野の発展には、意義深い研究成果を出し続けること、教育を続けること、そして社会に受け入れられることが不可欠であり、本拠点において基礎教育を受けた若手研究者が将来の環境研究に大きな役割を果たすものと考えます。

[社会人教育・環境教育]
本プログラムを通して、プロセス研究及びリモートセンシング研究等を統合した衛星生態学のコンセプトを紹介する公開講座を開講し、環境関連NPO、環境行政担当者、中・高等学校教員、企業の環境マネージメント担当者等への衛星生態学の基礎教育を行います。この教育コースではフィールド及びラボ(リモートセンシング)実習を開講し、本プログラムの研究野外フィールドを利用して実践的な教育を行います。これらの教育実践により高度な社会人教育プログラムを開発し、衛星生態学・環境教育分野の大学院の創設を模索します。研究関係者のみならず広く門戸を開放し、研究フィールドでの教育活動を行うためには、流域圏科学研究センターの高山試験地のような施設が拠点の場として重要な意味をもちます。米国では長期的研究・教育サイトをLTER(Long Term Ecological Research)ネットワークとして整備し、大学や研究所の研究者による研究フィールドとしての利用に加えて、小・中・高等学校や市民を対象とした環境教育の場としています。我が国でも日本生態学会を中心として、試験林を有している大学間でのネットワーク作りが検討され始めています。衛星生態学の中心拠点となる流域圏科学研究センター高山試験地も研究フィールドとして、また環境教育の現場として広く開放することにより、本拠点が我が国における研究・環境教育の中心的な役割を担うようになることが期待されます。

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