広域における炭素収支の推定結果の検証法開発(科研費基盤研究A)

プロセスモデルによる炭素収支のスケールアップ推定の精度検証手法の開発(2010-2013)

参加メンバー
・岐阜大学 流域圏科学研究センター:粟屋善雄 (研究リーダー)・大塚俊之・玉川一郎・児島利治・斉藤琢(2012~)・ 村岡裕由(2010)
・ (独)森林総合研究所:高橋與明

研究対象地 
・岐阜県高山市大八賀川流域

研究背景
地球温暖化による森林を含む生態系への影響が懸念されており、様々な研究機関が広域の炭素収支推定をおこなっている。しかし広域での炭素収支推定の精度検証法は確立されておらず、さらなる炭素収支の推定精度向上が求められている。

研究目的
広域へのスケールアップにおいては
要因1.限られたパラメータを異なる森林生態系に代替適用する場合の不適合による炭素収支の推定精度の低下
要因2.森林タイプや葉面積に関する情報の精度不足などによる炭素収支の推定精度の低下
が問題と考えられる。

本研究では
要因1について、航空機レーザデータを利用して広域で炭素収支をマッピングし、流域レベルでの炭素収支の推定結果と比較して、推定精度を劣化させる主要な要因を検証する。
要因2については、衛星データに基づく複数の森林タイプ図を利用し、分類精度の違いや森林タイプの混交割合が炭素収支推定に及ぼす影響を評価する。

以上の2点により、スケールアップの精度と炭素収支の推定精度に諸パラメータが及ぼす影響を評価し、スケールアップによる炭素収支推定における検証法を体系化して提案することである。

期待される成果

スケールアップにおける炭素収支推定結果の精度検証法を確立すること、特に面的に不均一な植生に対する検証法を確立することで、広域の炭素収支推定の精度向上に多くの知見を与え、炭素収支研究に大きく貢献できる。

研究成果

  1. 2007年4月と5月の高分解能衛星データとLiDARデータから得られた樹冠高を利用して、森林タイプ分類の精度を向上させた。
  2. 2003年、2005年、2011年のLiDARデータを利用して地盤高(DTM)の精度を検証し、DTMの精度がバイオマス推定に及ぼす影響を明らかにした。
  3. LiDARデータから求めた樹冠高を利用して、森林の木部バイオマス(地上部+地下部)のバイオマス推定モデルを作成した。
  4. 2005年と2011年のLiDARデータで木部バイオマスを推定し、両者の差から木部の生産量(木部NPP)を推定した。
  5. 炭素収支モデル(SATECO-LMS)の気候データと植生パラメータを改良して、5つの植皮について炭素収支(NEE, GPP, NPP)をシミュレーションした。
  6. 3つの森林タイプ図を利用して対象流域の炭素収支をマッピングし、土地被覆分類の精度がが炭素収支に及ぼす影響を評価した。
  7. 森林タイプ図とNEEのシミュレーション結果を利用して、異なる植生が混在する場合でのNEEへの影響を評価した。
    NPPのシミュレーション結果と木部NPPを比較して、シミュレーションの特徴を評価する方法を開発した。

発表論文

  1. Saitoh T.M., Nagai S., Noda H.M., Muraoka H. and Nasahara K.N. (2012) Examination of the extinction coefficient in the Beer–Lambert law for an accurate estimation of the forest canopy leaf area index. Forest Science and Technology, 8(2), 67-76. DOI:10.1080/21580103.2012.673744
  2.  Saitoh T.M., Nagai S.,Yoshino J.,Muraoka H., Saigusa N., and Tamagawa I. (2012) Functional consequences of differences in canopy phenology for the carbon budgets of two cool-temperate forest types: simulations using the NCAR/LSM model and validation using tower flux and biometric data. Eurasian Journal of Forest Research. 15(1), 19-30.
  3.  Saitoh T.M., Tamagawa I., Muraoka H., and Kondo H. (2013) An analysis of summer evapotranspiration based on multi-year observations including extreme climatic conditions over a cool-temperate evergreen coniferous forest, Takayama, Japan. Hydrological Processes, 27, 3341-3349, DOI: 10.1002/hyp.9834
  4.  高橋與明,粟屋善雄,田中真哉 (2013) 航空機LiDARによるスギ,ヒノキ林分の平均樹高推定-レーザ点密度を変えた場合の事例-. 九州森林研究, 66:6-9
  5.  小谷英司,粟屋善雄 (2013) 低密度航空機LiDARによる人工針葉樹林の林分パラメータの推定 写真測量とリモートセンシング, 52(2):44-55.
  6. 福田夏子, 粟屋善雄, 児島利治 (2012) LiDARとQuickbirdのデータを用いた森林植生タイプの分類―高山市大八賀川流域の事例-.システム農学雑誌,28(4),115-122.
  7. Abdullah H.M., Akiyama T., Shibayama M., Awaya, Y. (2011) Estimation and validation of biomass of a mountanious agroecosystem by means of sampling, spectral data and QuickBird satellite image. International Journal of Sustainable Development and World Ecology, 18(5), 384-392.

研究成果 PDF

科研基盤A22248017_岐阜大流域_粟屋