火入れ跡地におけるブナ科樹種の遷移課程

日本生態学会第53回大会(新潟,2006)

菅原 敬(鳥取大学農学部)
佐野淳之(鳥取大学農学部)


 火事は生態系や植生の構造を決定する重要な要因になっている(津田, 1995)。そこで、北米などにみられる高頻度の連続的な火事と同様の働きをもつと思われる火入れの撹乱強度を決定する要因と、火入れが植生に及ぼす影響を考察した。また、Quercusは火入れ後に優占する(Abrams, 1992)が、火入れ放棄後のコナラ林成立までにどのような植生の変化があり、それに関わる要因は何であるか考察した。とくに本報告では、長年にわたって火による撹乱を連続的に受け続けた土地が撹乱を受けなくなった際にどのような林分へと遷移するか明らかにする。
 調査地は岡山県の蒜山地域に位置する火入れ地の北向き斜面と南向き斜面および火入れ跡地である。火入れ跡地は全て北向き斜面で火入れ放棄後2年目、8年目、16年目、22年目、24年目の場所を使用した。なお2年目は草地、それ以外は林地である。火入れは燃焼温度の測定と火入れ当日の延焼状況をカメラおよびビデオで記録した。火入れ直前に斜距離15 mごとにバイオマスの刈り取りを行い乾重量を測定した。草地では稚樹調査、林地では上木調査および稚樹調査を行った。また、林地全域でコナラを中心に100本弱のコアを採取し、樹齢と肥大成長量を集計した。
 火入れの燃焼温度とバイオマス量の関係から燃焼温度が草本バイオマス量に依存する傾向がみられた。斜面の上部から下部に向けて燃焼温度は増加していた。このことは草地における稚樹出現本数が斜面下部に向かって減少傾向を示すことと関連していると思われる。林地では8年目ではクリが優占していたが、15年目以降はコナラが優占していた。この理由としては、火入れ放棄後2年目以降にコナラ稚樹がクリに比べ多かったこと、8年目から15年目にかけてクリの枝分率が大きく低下すること、コナラの萌芽率が高まることなどが挙げられる。


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