homeお問い合わせ

 
▲写真の説明:タイトルバックの背景になっている写真は秋田県男鹿半島の寒風山で撮影したものです.すでに農業における草原の利用価値はなくなりましたが,国定公園の景観を維持するために毎年刈り払いをおこなっています.そのため,軽井沢ではすっかり姿を消してしまったアズマギクやオキナグサを今でも見ることができます.




現在の軽井沢では広い草原を見ることはできませんが,かつてはかなりの面積で草原が分布していました.草原が広がっていた頃にはアズマギク(おさらばな)やオキナグサ(ちんころばな)などの草原生の植物が普通に見られたわけですが,今はほとんど見ることができなくなっています.草原を復活できれば,すでに消えてしまっている草原生の植物が,もしかしたら戻ってくるかも知れません.古い時代の写真は軽井沢「昔の風景写真」のページをご覧ください.なお,「昔の風景写真」からはブラウザの「戻る」を使って戻ってください.
軽井沢サクラソウ会議では追分原のアカマツ林に敷設された防火帯の一部と,三ツ石の大規模風倒地で半自然草原の再生実験をおこなっています.



軽井沢サクラソウ会議で編集した「もう一度見たい! 軽井沢の草原・湿原」という本を読むと,昔どれほど草原が広がっていたかがわかります.

本の写真をクリックすると,この本に関することが出ているページに移動できます





◆ 追分原防火帯 ◆


追分原の防火帯はときどき刈り払いなどの管理がされていたようですが,2008年の時点ではしばらく管理作業がおこなわれなかったらしく,防火帯内に侵入した樹木(アカマツ,シラカンバ,ヤナギ類など)が2,3mの高さにまで達していました.2008年10月にはサクラソウ会議のメンバーや森林管理署の職員さんなど10人あまりで,侵入樹木の伐採やススキなどの草本植物の刈り払いをおこないました.毎年刈り払うことにより,いい状態の草原ができると考えられますから,その後も毎年秋に刈り払いを継続していく予定です.もちろん,防火帯の草原がどのように変化したかを知るために,植物群落の調査も継続しておこなっています.

左の写真:2008年夏の防火帯のようす

樹木が茂り,およそ草原のイメージではありませんが,刈り払いの作業後はしだいに草原の景観が回復しつつあります.





刈り払い前から防火帯に見られた主な草原生植物

   
ヒヨドリバナ コマツナギ ススキ    

 

追分原防火帯における作業など

 

年度 作業・調査等の種類 日付 備考
2008 入域および調査許可取得 2/4 「植物群落の構造変化ならびに炭素循環・生物多様性変化に関する研究」の実施のための許可申請による

 

植生調査 7/27, 7/28 刈り払い前の調査では,アカマツ,シラカンバ,イヌコリヤナギなどの樹木の侵入が確認された
  刈り払い 10/16

樹木の伐採とススキ等の刈り払い

2009 東信森林管理署との間で協定の締結 3/23 今後も防火帯の管理や調査がやりやすくなるようにと,「多様な自然を育む森林整備プロジェクト」の活動に関する協定書というのを取り交わした
  植生調査 7/28, 8/13, 8/14

樹木の優占度が小さくなり,かわって一部の草原生植物(コマツナギやメドハギなど)の優占度が高くなった  <樹木は無くなったわけではなく,小さい個体だけになった>

  刈り払い 10/19  
2010 立て札の設置

5/10

実験地であることを示すと同時に研究の障害となるような行為をしないよう協力を求める立て札を設置した(→写真

  植生調査 7/31

1調査区(2×2m)あたりの出現種数は増加の傾向にあるが,総出現種数は前年よりも少なくなった

  刈り払い 11/22  
2011 植生調査 9/2, 9/7, 9/9

この年の調査ではノビルが見つかった

  刈り払い 10/18  
2012 植生調査 7/28

  刈り払い 10/7  
2013 植生調査・フロラ調査など 8/9, 8/11

  刈り払い 10/27  
2014 植生調査・フロラ調査など 8/1, 8/14

  刈り払い 8/1, 10/25 散策路に使えるように幅1mほどだけ夏に刈り払いを実施した


 

◆ 三ツ石風倒地 ◆


軽井沢町西部の三ツ石地区には国有林の飛び地がありますが,水源地になっているため一般の人の入域は制限されています.その国有林の一部(カラマツ林約1ヘクタール)が2007年9月6日の台風9号の大風により大規模に倒壊しました.その跡地で半自然草原の再生実験をおこなっています.

左の写真:2008年夏の風倒地のようす

 森林管理署が2009年に倒木処理をする前は,倒れたり折れたりした木が乱雑に絡み合っていました.

三ツ石風倒地における作業など

 

年度 作業・調査等の種類 日付 備考
2007 台風9号襲来 9/6 三ツ石地区のカラマツ林を含む軽井沢一帯で風倒地が発生した

2009

東信森林管理署による風倒木の整理伐作業など 被災地が国有林なので森林管理署が風倒木を伐採,搬出した
  東信森林管理署との間で協定の締結 3/23 追分原の防火帯と込みで,「多様な自然を育む森林整備プロジェクト」の活動に関する協定書というのを取り交わした
  区分け作業 7/28 約0.5ヘクタールの風倒地を,A区(毎年刈り払い),B区(隔年刈り払い),C区(対照;放置)の3区画にわけ,簡単な測量をして目印のポールをたてた
  植生調査 7/29, 8/14, 9/5 最初の夏にはメマツヨイグサ,ヒメムカシヨモギ,タラノキの3種が圧倒的に優勢になった
  刈り払い 8/13 A区(毎年刈り払い)の草刈りを実施した
2010 立て札の設置

5/10

実験地であることを示すと同時に研究の障害となるような行為をしないよう協力を求める立て札を設置した(→写真

  植生調査 7/24, 7/25, 7/31 2009年に刈り払った区画では調査区あたりの種数が増加したが,手を着けなかった区画では種数が減少した
  風土フォーラム

7/25

「草原再生実験−秋の七草の復活をめざして−」と銘打って現地説明と観察会を実施した(→写真

  刈り払い

7/26, 7/28, 7/31

A区(毎年刈り払い)と,B区(隔年刈り払い)の草刈りを実施した
2011 温度計・水分計の設置

4/5, 4/9

C区(対照)とA区(毎年刈り払い)との境界にロガー(記録装置)を設置し,両方の実験地にリード線を延ばして温度センサーと土壌水分センサーを埋設した

  土壌呼吸調査

6/6, 6/20, 12/17

A区(毎年刈り取り)とC区(対照)で土壌呼吸速度を測定した(by Adachi)

  植生調査 8/9, 8/11 2009年に刈り払った区画では調査区あたりの種数が増加したが,手を着けなかった区画では種数が減少した
  刈り払い

8/10, 8/11

A区(毎年刈り払い)の草刈りを実施した
  温度データの回収・温度計電池の交換

12/17

A区では直射日光が地表面を暖めるので,樹林化しつつあるC区にくらべて温度の変動幅(日較差)が大きかった

2012 土壌呼吸調査

5/13, 6/24, 7/29, 8/5, 8/19, 9/30

去年に引き続きA区とC区で土壌呼吸速度を測定した(by Adachi)
  (なお,7/29は機械の不具合によりデータが採取できなかった)

  自然観察会

6/23

  水分データの回収・水分計電池の交換

6/24

 

  温度データの回収・温度計電池の交換

6/24, 12/1

6/24のデータ回収では電池切れのため3/19までの温度しか測定できていなかった

  植生調査・フロラ調査など 7/28, 7/29, 8/13 ノハナショウブの着花個体が出現した
  刈り払い

7/28, 8/15

A区とB区で草刈りを実施した(8/15の全体の刈り払いに先立ち,温度センサー・水分センサー設置場所付近だけ前もって実施した)
去年までは刈った草を林内に放置したが,今年からは有機農業実施グループで引き取った
2013 植生調査・フロラ調査など 4/5, 6/28, 8/1, 8/8, 8/10, 8/11  
  水分データの回収・水分計電池の交換など

4/29

 

  温度データの回収・温度計電池の交換など

4/29

12/20のデータ回収では電池切れのため11/14までの温度しか測定できていなかった
8/19には刈り払い区の地下1cmで58.8℃の最高温度を記録した

  刈り払い

8/8, 8/10

A区とB区で草刈りを実施した(8/2の全体の刈り払いに先立ち,温度センサー・水分センサー設置場所付近だけ前もって実施した)
2014 植生調査・フロラ調査など 6/21, 7/12, 7/31, 8/1  
  刈り払い

7/12, 8/2

A区とB区で草刈りを実施した(8/2の全体の刈り払いに先立ち,温度センサー・水分センサー設置場所付近だけ前もって実施した)
  自然観察会

7/31

  水分データの回収・水分計電池の交換など

8/2

 

  温度データの回収・温度計電池の交換など

12/20, 2/4

12/20のデータ回収では電池切れのため11/14までの温度しか測定できていなかった
8/19には刈り払い区の地下1cmで58.8℃の最高温度を記録した


 

◆ 草原の再生に関係するページ へのリンク◆




■ 埋土種子の調査

草原生の植物がすでに無くなってしまった場所(森林など)でも,土壌中に種子が残されていれば,草原の明るい環境が作られたときにそれらが発芽してくる可能性があります.土壌中で生きたまま眠っている種子のことを「埋土種子」と呼びますが,軽井沢サクラソウ会議メンバーの津田(岐阜大学)が中心になって,簡単な方法で軽井沢の埋土種子を調べています.埋土種子の調べ方には,土の中から種子を見つけて数える「ハンドソーティング」と呼ばれる方法と,森から採ってきた土を明るい場所に置いて種子を芽生えさせる「播きだし」と呼ばれる方法の2通りがありますが,軽井沢サクラソウ会議では簡略化した播き出し法を採用しています.

  

詳しい実験の方法や芽生えの様子が津田研究室ホームページの「軽井沢播き出し実験」のページに紹介されています.津田研究室ホームページには播き出し実験以外にも軽井沢の休耕田の野焼きの様子や,茅葺き屋根の写真なども掲載されています.

写真をクリックすると岐阜大学の津田研究室ホームページに移動できます

 

 

写真をクリックすると津田研究室ホームページの「芽生えの写真」に直接移動できます

   

■ 風土フォーラムの資料

軽井沢サクラソウ会議では,定期的に「軽井沢風土フォーラム」を開いて,サクラソウ会議メンバー以外も含む多くの人たちに様々な情報を発信しています.2007年の第1回からすでに20回あまりのフォーラムを開催しましたが,このうちの何回かを半自然草原の再生に関係するような講演やイベントにあてています.
 なお,フォーラムの内容については「風土フォーラム(2007〜)」と「風土フォーラム(2009〜)」のページに全記録が残されています.

風土フォーラムのうち第5回,第13回,第20回はサクラソウ会議のメンバーでもある岐阜大学の津田が演者になって講演をしたもので,第5回と第13回の発表内容については講演を書き起こした講演記録が公開されています.第20回の発表内容は講演時に使用したスライドの簡易版を公開しています.
 

参考資料1.半自然草原の再生に関係する「風土フォーラム」の講演記録のページへ進む.
 

参考資料2.第5回の講演記録は「講演記録集 第1集(自然・生態)」にも収録されています.

 

 


このページの いちばんはじめ にもどる