日々粗忽 in Montreal


いんてこる雑感

大会要旨集はA4版237ページの厚手のものが配られたが,中を見ても要旨は載っていない.各セッションの概要と発表タイトルだけがならんでいる.ものすごくたくさんの発表がひしめいていることが伺える.要旨は付属のCD-ROMに入っている.パソコンを持ってきてないから読めない.でも大丈夫.会場のあちこちに"Kiosk"があって,そこのパソコンの画面で要旨を読むことができる.Kioskはそれほど混雑していない.

会場にはインターネットカフェがあり,無料で開放されている.ここはセッションの合間にはけっこう混雑していた.



メインの会期は8月8日から12日までの5日間.この間,午前・午後は約30の会場でシンポジウムやオーラルセッションが同時進行する.夕方にはポスターセッションがあり250のポスター発表が行われる.オーラルセッションやシンポジウムはよく似たテーマのものが同時に開催されることが少なくない.同時に開催して競争させるのがいんてこるの流儀という話も聞いた.どの会場で発表を聞くか,かなり迷う.

セッションやシンポジウム以外に,エクスカーションやフィールドトリップもたくさん用意されていた.中には何泊かするものも.僕はどれにも申し込まなかったが,どれかに参加してもよかったかと思う.

セッションのテーマをみると,生態系の炭素循環・炭素収支に関するものと,生物学的侵入に関するものが2大勢力という印象をもった.これらのテーマのセッションは毎日,午前も午後もたくさんの会場で開催されていた.これらが今,生態学に課されている大きな課題であるということだろう.

ポスター発表の会場には,出版社や分析機器・測定機器メーカー,NGOなどの展示ブースが約70あった.ほとんどの出版社はいんてこる特価2割引で販売していた.いんてこる終了後もしばらくはいんてこる特価での通販が可能な出版社がけっこうあるので,各社のホームページにアクセスしてみるとお得な情報が転がってるかもしれない.

日本生態学会といんてこる.発表のほとんどはレベル的に差がないように思う.あたりまえといえばあたりまえかもしれない.なににせよ国際学会を必要以上におそれることはないと感じた.ただ,中にはとても洗練されたものがあるという印象もうけた.フィールドで実験をおこなっている人たちの発表をみると,事前の計画がしっかりしているのを実感する.行き当たりばったりではなく,よく練られた実験デザインとなっている.また,結構大きな人数のチームで大規模な研究をしている例が多かった.研究の進め方がちがうのだろう.

次回のINTECOLは2009年.オーストラリア,ブリスベン.時差はプラス1時間.時差ぼけで眠くなる心配はない.ぜひその日にむけてネタとお金と身分の準備をしておきたいところである.

英語のカベ

僕の英語力は,客観的な指標に照らしたことがないので,どういうレベルかわからない.でも,読むのも書くのも話すのもえらい時間がかかるし,聞くのは丁寧にしゃべってもらってどうにかこうにか,というレベルである.このような貧弱な英語力のまま国際学会に参加したらどうなるのか,気になるところであったが,悲惨な状況には追い込まれなかった.ただし,もし口頭発表をしていたら多くの人に多大な迷惑をかけたにちがいない.

英語力が貧弱であることでいちばん困ったのは,発表を聞くときに聞き漏らしがかなりあってそのために理解がおいつかないということであった.またポスターを肴に議論するときに,自分の聞きたい質問をきちんと話せない場合が何度かあった.日程が後半に入って疲れがたまってきた頃には聞き漏らしや言葉が浮かばない症状が顕著だった.英語はできるにこしたことはない.けれど,今回は貧弱な英語力でも参加してよかったと僕は思う.とはいえ,やっぱりこれからために英語力を磨こう.

日本人の英語が聞きやすいのは当然として,ほかではフランス人の英語がかなり聞き取りやすかった.僕にとっていちばん聞き取りにくいのはアメリカ人の英語だった.中国人の発表者が質疑応答のときに「ヒアリングが苦手なのでゆっくりしゃべってください」とアメリカ人に言った.アメリカ人はゆっくりしゃべってくれたが,それでも聞き取りにくかった.

なぜアメリカ人の英語がききとりにくいのか,そのときにわかった.彼らは単語と単語の間をうねうねとぜんぶつなげて発音してしまうから個々の単語を聞き分けにくくなる.だから文章のどこかで聞き取りにつまずいてしまうと途中から復帰することが困難だ.ゆっくりしゃべってくれたときでも,単語と単語の間はやはりうねうねと全部つながっていたので,聞き取りにくさはあまり改善されなかった.

NHKのBSでアメリカABCのニュースをやっているが,あれもやっぱり同じ理由で聞き取るのが難しい.もっともアメリカ人の英語がすべて聞き取りにくいわけじゃなく,あのようなしゃべりかたをしない人のは聞きやすい.テレビでバーブラ・サンドライト(女優・ユダヤ系アメリカ人)のインタビューをみたが,彼女の英語は単語と単語が区切れていて聞きやすかった.

アメリカ人にお願いするときは,ゆっくりしゃべってください,といわずに,単語と単語の間を区切ってしゃべってください,というべきかと思った.アメリカ人には,非英語圏の人に聞き取りやすい話し方,共通語としての英語のあり方,をもっと考えてもらいたい.

などと書いたが,本当は僕は,アメリカ人のうねうね米語を聞き取りたいと思っている.聞き取れないのはやっぱり腹立たしいのだ.

得たもの

はじめて国際学会に参加して何を得ただろう.一番は,ものの見え方が変わったことだ.たぶんローカルな研究をしている人ほどものの見え方が変わると思う.どのように変わったかは日記本文中に少しずつ書いたが,読んだ人に伝わるように書けなかったかもしれない.研究について,発表について,英語について,人間について,その他さまざまな事柄について少しずつ見え方が変わったのだが,それらを一言で表すことはむずかしい.あえて書くなら,僕と彼らはそんなにちがわない,ということ.むりやり一言で書いてしまうとちょっと不遜な感じがする.しかも陳腐な感想みたい.やっぱりひとことじゃいえない.


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