お役立ち豆知識③ 「明治以降の被害地震」


 地震が発生すると、強い揺れに襲われる地域においては建物が傾いたり人々が怪我をしたり、亡くなったりします。さらにはライフライン系(電気、ガス、水道、交通網など)が遮断されるために、大規模な2次災害に拡大してしまうこともあります。2次災害で恐ろしいのは火災です。火災が起きたのに水道が使えない、そうすると広い範囲にわたり火災が広がってしまいます。震災後も、多くの人が避難所での不便な生活を余儀なくされたり、、、と様々な被害があります。

 我々の社会がこのような大きな被害を被った地震を「被害地震」と呼びます。その被害の詳細について記録・分析し、将来の地震による被害を最小限に抑えるための貴重な教訓としてきました。

図1

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 表-1は、明治以降に我が国で発生した被害地震について示したものです。左から順に、地震名、地震の規模(マグニチュード)、発生年月日、さらに各被害地震における死者・行方不明者数が棒グラフで示されています。死者・行方不明者が1,000名を超えるものは赤で、100名を超えるものは青で示しました。台風や洪水も恐ろしいですが、大きいものがくれば死者が数千人にも及ぶ地震による被害は、我々日本人にとっては最も脅威となる自然災害です。

それでは、この表について分かることや、最近の被害地震について以下に纏めてみました。

 

[1]  死者・行方不明者が1,000名以上となった12の被害地震に注目すると、豆知識①で紹介しましたプレートとプレートの間で起こる地震(海溝型地震)が6回、陸域の浅いところで起こる地震(内陸直下地震)も6回発生しています。

 海溝型地震は海で起こる地震で、東北地方太平沖地震のように断層面積がとても広いです。このため広い範囲で震度が大きくなり、当然、死傷者も増えますね。対して内陸直下地震は断層は小さいのですが、断層の近くでは震度が大きく(すぐ足元で起こるので)都市部で起こるととても被害が大きくなります。

 地震は繰り返し同じ場所で起こるのですが、内陸直下地震を起こす活断層の繰り返しの平均周期は数千年と長いです。ただし、国内には多くの活断層がありますので安心はしていられません。以上のようなことからこのような結果になっていると考えられます。

[2]  上記の死者・行方不明者が1,000名以上となった12の被害地震は約120年の期間に発生しており、平均10年に1回という短い間隔になります。これほど頻繁に被害地震が発生する国は、日本以外にはありません。

 平均発生頻度は10年程度ですが、1943年鳥取地震から1948年福井地震までの5つの地震が6年間に発生しているので、発生間隔期間にはおおきなばらつきがあることも分かります。戦後の福井地震から1995年兵庫県南部地震まで約50年の間、死者・行方不明者が1000人を超える被害地震が偶然にも発生せず、この間に我が国は大きな経済発展を遂げました。耐震の設計基準も何度もより厳しいものに改定されており、我が国では1000人以上もの死者がでるような悲惨な地震災害は今後は発生しないだろうと思っていた人も少なくなかったと思います。私もそう思っていました。

[3]  1995年兵庫県南部地震は典型的な内陸直下地震で、神戸市という大都会の直下で発生したため、たいへん多くの方が亡くなりました。この地震を契機として、ほとんどの耐震基準が大きく改定されました。重要な構造物は、内陸直下型地震のような強い揺れに耐えられるように設計されました。

[4]  2011年東北地方太平洋沖地震では、主に津波により2万人近くの方がその尊い命を失いました。東北地方では、1896年と1933年の2度にわたって三陸地震津波が発生し、それぞれ26,360人、3064人が亡くなっています。明治や昭和の災害時と比べて津波警報システムが高度なものになってきているのに、なぜ2011年の地震津波でもこんなに多くの人々が亡くなったのでしょうか。検証すべき事項はたくさん残されていると思います。

 

 次回は、2011年東北地方太平洋沖地震で得られた教訓についてお話したいと思います。