岐阜大学流域圏科学研究センターは、流域環境を扱う国内初の組織としてスタートし、流域圏における多様な自然科学的事象・人為的事象の解明を目指して「流域圏科学」を推進してきました。当センターは、国内・国際研究機関や研究ネットワークと連携協力して、SDGs(持続可能な開発目標)の達成や脱炭素社会の実現における、地域共通、世界共通の課題に取り組んでいます。「第7回流域圏保全研究推進セミナー」は、当センターの活動を多くのみなさまに認知していただくとともに、「流域圏科学」の今後の発展について議論することを目的として、令和5年3月10日(金)に柳戸キャンパスで開催されました。詳細はこちら(https://www.green.gifu-u.ac.jp/symposium7-jp/)。
本セミナーは昨年度に引き続き新型コロナウィルス感染防止対策のためハイブリット開催となりました。開会は李富生センター長の挨拶で始まりました。第一部の特別セッション「森林のリモートセンシングと将来変動予測の研究の展望」では、当センターで長年にわたり教育研究活動にご尽力され、本年度で退職される粟屋善雄教授より「森林のリモートセンシング:43 年間の思い」というタイトルで最終講義が開講されました。続いて、宇宙航空研究開発機構の林真智博士、落合治博士、国立環境研究所の両角友喜博士の3名の招待講演者をお招きして、高山試験地を利用した先進的な研究についてご講演いただきました。最後は共同研究支援室より衛星生態学にまつわる国内・国際的な研究動向と将来展望についての議論で締めくくられました。第二部前半では、「流域圏科学研究センター活動報告」として、森林機能分野3名、水物質循環分野2名、地域協働・減災分野1名の当センタ-教員から成果報告が実施されました。また、センター客員教授である中国山西大学のDu Zhiping教授に水物質循環分野の研究成果をご講演いただきました。第二部後半では、研究コア施設(高山試験地、微生物分析室、水質分析室)の活動報告、岐阜大学流域水環境リーダー育成プログラム(BWEL)の活動報告を行いました。最後に、李富生センター長より閉会の挨拶をいただきました。
セミナー参加者は学外からの参加者70名を含む計90名であり、活発な意見交換が実施されました。当センターでは今後も流域圏保全研究推進セミナーを毎年開催することにより、関連研究コミュニティとの共同研究の拡大を通じて基礎から応用に至る「流域圏科学」の体系化を図るとともに、地域社会との協働体制の促進により環境問題への適応と解決に取り組む実践的な「流域圏保全学」の醸成を推進していくこととしています。
プログラム
10:00 – 10:10 開会挨拶: 李 富生 流域圏科学研究センター長
10:10 – 12:00 第一部 「森林のリモートセンシングと将来変動予測の研究の展望」
【最終講義】
粟屋 善雄: 「森林のリモートセンシング:43 年間の思い」
【招待講演】
1. 林 真智、落合 治(宇宙航空研究開発機構): 「衛星観測による森林バイ
オマスのマッピング技術の研究 ~高山から世界へ」
2. 両角 友喜(国立環境研究所): 「太陽光誘起クロロフィル蛍光(SIF)に
よる光合成モニタリング:鉛直多層—高分解能分光の研究とその展望」
【共同研究支援室】
村岡 裕由: 「生態系・生物多様性観測の動向と高山試験地の展望」
意見交換
12:00 – 13:30 - 休憩 -
13:30 – 14:50 第二部 「流域圏科学研究センター活動報告」
【森林機能分野】
1. 斎藤 琢: 「冠雪害がスギ林の供給サービスに及ぼす影響」
2. 篠塚 賢一: 「屋久島の森林河川における大気硝酸の影響」
3. 永井 信: 「流域の景観と人々の関わりの時間変化を紐解く」
【水物質循環分野】
4. 魏 永芬: 「農地森林土壌における汚染物質の挙動、肥沃度の評価」
5. 児島 利治: 「森林の成長、林況変化が森林流域の流況に与える影響」
6. Du Zhiping: 「The strategy and technology for environmental
problems caused by the exploitation and utilization of coal in China」
【地域協働・減災分野】
7. 久世 益充: 「地震動波形の特徴抽出手法の検討」
14:50 – 15:00 - 休憩 -
15:00 – 15:50 【研究コア施設の活動報告】
高山試験地 鈴木 浩二
微生物分析室 日恵野 綾香
水質分析室 廣岡 佳弥子
【流域水環境リーダー育成プログラムの活動報告】
石黒 泰
15:50 – 16:00 閉会挨拶: 李 富生 流域圏科学研究センター長